さいごの北斗星、尾久車両センターへ。
ついに、8月23日の上野着を以って、北斗星の、そして「星の寝台特急」ブルートレインの半世紀以上にわたる歴史に完全な幕が降りた。最終日の上り北斗星がついに尾久車両センターまで回送され、仕業を完全に終了した。回送のもようと、最終編成の組成を紹介する。
最終牽引機EF510−515に推されて、東北回送線経由で尾久車両センターへと回送される北斗星。くしくも運行開始時の北斗星を牽引した通称「虹釜」EF81−95が見守っている。
「よく最後までぶじに頑張った。ごくろうさん―。」
そんな言葉を掛けたのだろうか。
やがてDE11−1031による入換が行なわれ、客車は洗浄線へと据え付けられた。しかし、彼女たちがふたたび化粧直しをして次の仕業へと旅立つことはもうない。
最終編成の組成を紹介
手向けの意味を込めて、最終北斗星として組成された東オク24系編成を車番とともに紹介したい。洗浄線ホームに停車中のため台車が写っておらず、形式写真とはいえないが、それでも。
オハネフ25形200番台。オハネフ25の最終増備車。昭和55(1980)年落成ということは、北斗星運行開始時はまだ車齢8年の若さでの大抜擢だったということになる。また、引き戸化などの改造にも関わらず北海道向け500番台への改番はなされていない。
上段寝台の固定に伴ない、寝台側の窓が細長いのが特徴だが、これが24系25形のスタンダードな外観というイメージが強い。
オロネ25形500番台。オハネ25形の改造により登場した2人用A個室「ツインデラックス(DX)」。500番代はJR北海道・JR東日本にそれぞれ3両ずつ配置されたが、北海道の車両はすでにミャンマーへと譲渡された。
オロハネ25形500番台。1人用A個室寝台「ロイヤル」および1人用B個室寝台「ソロ」合造車。こちらも1974(昭和49)年新製のオハネ25形の改造により登場。上野方の大窓がロイヤル、札幌方の小窓がソロ。
オロハネ24形550番台。1人用A個室寝台「ロイヤル」・2人用B個室寝台「デュエット」合造車。オハネ24形の改造により登場。こちらのロイヤルは車両中央部に2室。「車両中央部がいちばん乗り心地がよい」という伝統的な考え方に基づけば、こちらがオロハネ25よりもこちらが正しい設計ということになる。シンメトリーな窓割りがとても優雅で、個室寝台車の品格に満ちあふれている。
オハネフ25形200番台。こちらも1980年落成。
オハ25形500番台。全室ロビーカー。こちらもオハネ25より改造。東日本車のこのロゴより、北海道車のエンブレムのほうがかっこいいと思うが、最後までお務めしたのはこちらだった。
スシ24形500番台。1974(昭和49)年にサシ489として新製。スシ24の遍歴については以前紹介したとおり。
こちらも、オロネ25形500番台。オハネ25形の改造により登場した2人用A個室「ツインデラックス(DX)」。
こちらもオロハネ25形500番台。1人用A個室寝台「ロイヤル」および1人用B個室寝台「ソロ」合造車。
こちらもオロハネ24形550番台。1人用A個室寝台「ロイヤル」・2人用B個室寝台「デュエット」合造車。
オハネフ25形0番台。オロハネ25としては古参の部類で、外観的には14系チック。1974(昭和49)年新製。車端部は優雅な折妻形だ。欲を言えばこちらを1両目に組み込んでほしかった。8月の乗車時にはお世話になりました。0番台なので寝台側の窓が大きくてよかった。編成中の開放B寝台では唯一の喫煙可能車だった。
カニ24形500番台。カニ24−22から耐寒・耐雪改造。1976(昭和51)年新製。「カニ」と聞くと電源車というイメージが強いが、本来は「荷物車」。最終北斗星は、荷物車を連結した最後の客車列車でもあった。
小学生のころ、鉄道ファンを開くと、ブルートレインの個室化改造によって新形式が続々と誕生し、独特な窓割りと豪華な内装に毎月ワクワクしたものだった。レガートシートや、パンタ付き電源車も平成になってから誕生したんだっけ…。今思えばあれがブルートレイン最後の輝きだった。あれから四半世紀あまり、今日のような日が訪れるとは夢にも思わなかったものだ。
夏も終わりに近い日曜日の昼下がり、尾久客車区には役目を失った客車たちが所在なげに佇んでいる。DE11の排気管からは、まだ陽炎が立ち昇っている。
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