いすみ鉄道のキハ28・52気動車急行「外房」に乗りに行く(3)
千葉県の大原ー上総中野間を結ぶいすみ鉄道(旧国鉄木原線)では、JR西日本から転属してきた国鉄型気動車のキハ28‐2346とキハ52−125が土日・祝日に急行列車として走っている。第3回めの今日は、キハ52に焦点を当てて紹介する。
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いすみ鉄道のキハ28・52気動車急行「外房」に乗りに行く(2)
上総中野からの間合い運用普通列車は超満員
10時26分に上総中野に到着した101Dは、10時54分発の折り返し大多喜行き普通列車102Dとなる。いわゆる「間合い運用」である。キハ28は、大多喜から「レストラン列車」として運用されるので、車内は準備に入っており客扱いは行わない。したがって、列車はキハ52の実質1両編成となり、ご覧のように行楽客ですし詰め状態となる。
末端区間でこのように乗客が殺到するのはなぜか。バスツアーの行路に組み込まれているのではと思ったところ、そうではなく小湊鉄道からの乗継客が多いらしい。せっかくのローカル線ののんびり旅を楽しみに来たのに、この混雑では印象もよくなかろうとすこし心配になった。とはいっても、さらに1両を増車するのは至難の業だ。
いすみ鉄道・小湊鉄道の直通運転はいつ実現?
鳥塚社長は小湊鉄道との通し運転を提唱しているようだが、実現すれば五井ー上総中野ー大原というルートで距離は70km弱となる。急行を運転すれば2時間半近い運転時間となり、なかなか壮大なスケールとなるのだが・・。首都圏の行楽客にとっても、外房の大原まで足を伸ばすよりは、千葉からわずか15分の五井のほうが気軽に足を運びやすい。アクアライン経由の需要も喚起できる。まさにいすみ鉄道にとっては悲願の「東京湾進出構想」である。
関東運輸局長がいらっしゃいました。2010.11.16 Tuesday – いすみ鉄道社長ブログ
鳥塚社長は就任間もない2010年にはすでに「2012年までに直通運転を実現したい」と公言しているが、いまだに実現しないあたり、商売っ気のない小湊鉄道側との温度差がかなりあるのだろうか、と邪推してしまう。いすみ鉄道は観光資源としてあえての国鉄型気動車を導入した「確信犯」だが、小湊鐵道はガチで準国鉄仕様の気動車を使用し続けている「確信犯」だ。
だがこれも、小湊鉄道初の観光列車「里山トロッコ」の成功によっては機運が高まってくる可能性はある。
小湊鐵道としては空前の「商売っ気」を出してきた里山トロッコのティザーサイト。と思ったら、モチーフは「レールバイクのカイカン」だそうだ。これも想定外の斜め上感である。
さて、列車は、11時16分大多喜着。構内入換ののち、11時38分発の普通列車103Dとなり、ふたたび上総中野に向かう。この列車では、キハ28はレストラン列車として客扱いする。
ちなみに私は1日乗車券を持っているので、キハ52+キハ28編成の仕業に合わせてまたも乗車する。
大多喜駅で構内入換を行なうキハ28‐2346+キハ52−125。なかなか軽快な加速を見せる。
キハ52‐125の詳細を観察
それでは、キハ52-125を観察していこう。この車両は昭和40年新潟鉄工所にて新製。今年でちょうど50歳になる大御所だ。越美北線用に敦賀運転所(金ツル)に配置され、後に糸魚川地域鉄道部(金ホク)に転属し、大糸線にて運用(その間の転属や貸出は不明)。2010年廃車後、いすみ鉄道に転属。新潟生まれの日本海育ちの北国っ子だけに、初めて過ごす温暖な房総の地はどう感じているのだろうか。
キハ52−125の車内。近郊化改造されてしまっているが、テーブルはないので国鉄スタイルを楽しめる。扇風機も正真正銘の「JNR」マーク入り。鳥塚コレクションの中吊り広告に注目。
東京西鉄道管理局の中吊り広告。新宿‐松本が3時間40分。辰野回りのためか、今より1時間20分も多くかかっている。また、グリーン車2両連結に注目。
チッキ(鉄道小荷物)の販促ポスター。なんと写真はEF58−163(沼津機関区)。あえて新型機ではなくEF58を持ってくるところがちょっと不思議な感じ。
キハ52−125の車内には大糸線の停車駅案内が。南小谷は欄外にはしょられてしまっている。「至松本」ではなく「至南小谷」にするあたりにJR西日本の縄張り意識を感じてしまうのだが・・・。
キハ52のアイドリング音は若干高め…?!
キハ52のDMH-17エンジンのアイドリング音。キハ28より若干音色が高く軽やかに聴こえる。
列車は12時1分ふたたび上総中野着。わずか11分で、12時12分発の上り急行2号104D(大多喜までは普通列車)として、いよいよ大原まで帰る。小湊鐵道との連絡はないので、車内の混雑はそれほどでもない。上りも、国吉駅はバカ停(といっても10分だが)するので撮影タイムは確保されている。
列車は終点大原には13時24分着。ふたたび下り急行3号105Dとして上総中野まで折り返す。車内を見たところ、午後の急行のほうが座席に余裕はあるようなので、のんびり乗車したい向きにはオススメかもしれない。
だが、注意すべき点として、午後の運用には大多喜〜上総中野間の末端部の折り返し運用がない。このため、大原〜上総中野を通しで乗ろうとすると、列車を降りて見送らない限り、大多喜で撮影ができないというネックがある。個人的には、大多喜駅での構内踏切から編成を収めるのが絶好の駅撮りスポットだと思うのだが、これができなくなってしまう。一応、運用表を下記に掲載しておきたい。
いすみ鉄道キハ28−2346+キハ52−125運用表(施行日:休日)
┌大原 857ー快速(100D)ー大多喜 828 └大原 918ー急行(101D)ー大多喜 955/1003ー普通ー上総中野1026┐ ┌大多喜1116ー普通(102D)ー上総中野1054┘ └大多喜1138ー普通(103D)ー上総中野1201┐ ┌大原1324ー急行ー大多喜1246/1249ー普通(104D)ー上総中野1212┘ └大原1352ー急行(105D)ー大多喜1424/1426ー普通ー上総中野1454┐ ┌大原1605ー急行ー大多喜1531/1533ー普通(106D)ー上総中野1504┘ └大原1633ー急行(107D)ー大多喜1704
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