京浜東北線の古レール上屋(東十条〜田端)
今日は、京浜東北線の古レール上屋でもご紹介。先月の「宇都宮線開業130周年記念号」のついでに記録したもの。車両は一切出てきませんよ、念のため。
東十条駅
京浜東北線といえば、なぜか島式2面3線のホームが多い。東十条、蒲田、桜木町。戦前の省電折り返し駅の設計かもしれないが、首都圏では他になかなか見かけないスタイルだ。ホームドアが今後設置されると、相当見た目は窮屈になり、古レール上屋の美しさをじっくり鑑賞できなくなってしまうはずなので、早めに記録・観察したいものだ。
この東十条駅のホーム上屋は、大正8(1919)年の建設。強度的なものだろうか。1本脚と2本脚が交互にくりかえし、一定のリズムを刻んでいる。
実は、このホーム床面の味気ないアスファルトも隠れた国鉄遺産だ。民営化後、イメージアップのためにホームの床にタイル貼り工事が施された駅は少なくない。この味気ないアスファルトに乗客の吐いたガムが点々と貼り付いているのが昭和の駅の光景だった。その意味では、東十条駅の「原形度」は高い。
コンコースののりば案内サインも、古いものが残っている。南行は「横浜方面」が最遠で、磯子、大船の名はない。1915年(大正4年)にはすでに桜木町まで直通運転を開始しているので、これは京浜東北線を乗り通して横浜まで行く客はおるまい、との見立てによるものだろう。
王子駅
つづいて王子駅。京浜東北線のホームにいても、都電荒川線の吊り掛け音がたまに聞こえてくる。また、2014年3月までは日本製紙十條工場へと向かう北王子線が分岐していた、なかなか趣深い駅だ。
上屋は谷型1本脚でほぼ統一されている。
ホーム上のキオスクも絶滅危惧種になってきてしまった。
また、王子駅といえば忘れてはならないのが飛鳥山下跨線人道橋だ。スパンは40mというなかなか大きな人道橋だ。これももちろん古レール製。大正14(1925)年製。
上中里駅
つづいて上中里駅。京浜東北線のなかでもなかなか秘境駅のイメージがあるが、実際南側が崖、北側に尾久車両センターに挟まれている谷のような地域の駅だ。京浜東北・根岸線の駅では最も乗車人員が少なく、東京23区のJR駅の中では越中島駅に次いで利用客数が少ないそうだ。逆にいえば、一軒家を構えて住むには穴場かもしれない。東京駅まで乗り換えなし17分でもあるし。
この駅も谷型1本脚だ。ホームが狭い割に構造物が多く、柱の並びを写すにはなかなか苦労する。
田端駅
つづいて田端駅。山手線にホームドアが設置されてしまったが、それでも視線を上げれば華やかなホーム上屋が眼に入ってくる。大正14(1925)年製。関東大震災のわずか2年後だ。
そして、田端駅で特筆すべきなのが、新築された橋上駅舎も、この古レールの上屋のデザインを尊重したものになっていることだ。
2面4線のプラットフォームを大屋根で覆い、吹き抜けにすることで、ヨーロッパの駅のような壮大さを感じさせる。また、大屋根の支柱に上屋と同じくアングルトラスを使用することでデザインに一体感が生まれている。
コンコースからエスカレーターに乗ってホームに降りていくときの高揚感は、なかなか他では味わえないものだ。
こうして見てきたが、赤羽〜田端間の城北地域では、高架化された赤羽を除くすべての駅に古レール上屋が残っていることになる。どこか昭和の工業地帯の臭いを感じさせる「京浜東北線」。駅にも魅力がたっぷり残っているのでいちど訪れてみてはいかが?
この記事にコメントする