最後のブルートレイン、北斗星乗車記(2)食堂車篇

この無垢の無骨な引き戸がキュルキュルと閉まる音が好きで、ついついデッキに立ってしまう。中央線沿線育ちだったので、いつも見ている183系にはステップがなかった。帰省時に乗り込む485系のステップを上がるのが、旅の入り口の通過儀礼だった。子ども心に、ステップのある485系のほうが大人っぽくてカッコ良く思えた。
最後の食堂車
こんな状況なので、食堂車グランシャリオは大人気。コンパートメントで知り合った方々とパブタイムを予約したが、無常にも「本日営業終了までにご案内できない可能性が高いです」との対応。日頃の行いのせいか、なんとかようやく一ノ関あたりで順番が回ってきた。

もとサシ481ことスシ24の車内から「ようこそ一ノ関へ」の看板を望む。かつての「はつかり」「やまびこ」「みちのく」でも見られた景色だろうか。

ビールはさんざん飲んだので、乾杯はワインとしゃれこむ。グラスワインは値段のわりにはとても味のバランスがよく美味だった。もしかすると列車に積まれて揺られているせい…?

食堂車らしい食事といえば洋食、洋食といえばハンバーグという発想。
たしかに、車窓の外に流れる街の灯りを見ながら食べるだけで二割増し、いや五割増しで美味しく感じる。

走行中の食堂車は揺れるので、飲み物を飲むときやソースをかけるときにはコツが必要だ、と教えてくれる人があったが、幸いにもコーヒーをこぼすことはなかった。保線技術の向上のせいか、それともスシ24の乗り心地のせいか。

食事を終える頃には客は自分たちのみ。旧客もそうだが、すこし空いているほうが雰囲気がじっくり味わえる。
すでに厨房ではあすの朝食の準備に余念がない。ディナー2回、パブタイムで23時までだいたい2回転だろうか。そして明朝7時から朝食タイムである―。寝る間もない食堂車のスタッフの方々には頭が下がる。本当に今まで長い間ありがとうございました。

通路を通って11号車まで戻る。歩く距離は長いが、列車に供食設備やロビーカーがなければ列車内を延々と移動する必要性はないわけで、この車内移動もまた愉しからずや、である。

列車は盛岡で運転停車。すでに駅構内は暗い。
沼宮内の駅は、新幹線の駅が併設されているので夜でもわかる。いよいよ奥中山越えだが、とくに意識している人は周りにいないようで、寝台は寝静まっている。かつて蒸機が三重連で越えたという難所を、EF510は軽快に峠を登っていく。だが、サミットを越えると、明らかに機関車の息遣いが変わり、惰行へと変わった。客車の刻むトトトン、トトトンというジョイント音がひときわ際立った。通り過ぎた山間の小駅で、灯りに照らされた保線員の姿が一瞬見えた。
(つづく)
続編はこちら
最後のブルートレイン、北斗星乗車記(3)「最後のブルートレイン「北斗星」乗車記。函館に到着!ED79と対面!!」
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はじめまして
臨時北斗星も上野発は残り3日となりました 作者様は9日に北斗星乗れたんですかうらやましいです
ブルーとレイン57年の歴史に幕悲しいですね
ありがとう北斗星、お疲れ様北斗星
御返事遅くなりましてすみません。
私は10時打ちに何度も撃沈しましたので、ツアーで申し込んで乗りました。
本当に悲しいですが、いつかまた鉄路を夜行列車が走る時代が来ることを願っています。